どうしても年齢を重ねてくると、若い頃より動かなくなってきていたり、病気になることも多くなるので、本人が気付かないうちに身体全体が変化してきているのです。
その変化がきっかけで「眠れない!」という状態になっていることが多いです。
特に、夜間トイレが近くなってしまい「寝てもすぐ起きてしまう!」「漏らしてしまったら、どうしよう!」という不安に襲われ、余計眠れなくなることも多々あります。
そこから、眠れないことが多くなり、高齢者ドライバーによる事故を起こしてしまったり、昼夜逆転や認知症の症状が出てきてしまうこともあったのです。出来るだけそうならない為にも、周囲の人達からの早めの察知や対応も必要となってきます。
では、高齢者の方々が出来るだけ眠れるようにするには、どうしたらいいのか?
詳しく解説していきたいと思います!
高齢者とは?
高齢者とは、国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人のことを高齢者としています。
65~74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
日本での高齢者の割合は20%にもなり、世界でも最も高い水準です。高齢者の割合は今後も増加し、総務省統計局によると2015年には25%を超えると見込まれています。(引用:厚生労働省)
そうすると、どうしても今の自分の身体の現状と、若い頃の気持ちとのバランスが取れず「あれ?」「おかしいな」などと、思うことが増えてくるんですよ。
若い頃の感覚で動くと、転んで怪我をしてしまったり。。トイレが今まで我慢出来ていたのが、間に合わないことが増えたり。。いろいろあるんだよ。。
自分も気を付けるのと同時に、高齢者の方々にも配慮がかなり必要になってくるなぁ。。
高齢者と睡眠障害との関係性とは?
では、高齢者になると、どうして「眠れない」「途中で起きてしまう」などという睡眠障害が起きてしまうのでしょうか?
そこには、様々な原因がありました。
睡眠とは?
睡眠は、心身の疲労回復をもたらすとともに、記憶を定着させる、免疫機能を強化するといった役割ももっています。(引用:厚生労働省)
睡眠にはレム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レム睡眠は文字通り、睡眠中に眼球運動が上下左右に速く動いているのが特徴で、夢を見ていることが多い(夢を見ていたことを覚えていることの多い)睡眠のことをいいます。なので、夢見睡眠とも呼ばれています。(引用:LSI札幌クリニック)
何だか、若い頃に比べると早寝早起きになってしまってね。早い時には、朝4時か5時には起きてしまうよ。
病院や施設にいると、よくこのような光景を目にします。
年齢を重ねていくと、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しになります。
したがって、高齢者の方々の早起きは病気ではありません。
眠くなったら横になったり、朝方に目が覚めて二度寝が出来なかったら、布団から出て散歩したりと、朝の時間を有意義に使ってみましょう!
どうしても、年齢を重ねると、眠りが浅くなってくるんですよ。
夜間、病院や施設で巡視をしていると、若い方々はトイレに全くいかずに朝を迎えることが多いのに比べ、高齢者の方々はトイレに何度も起きたり巡視の物音だけで起きてしまったりすることがあります。
それは、睡眠脳波を調べてみると深いノンレム睡眠が減って、浅いノンレム睡眠が増えるようになっているからなのです。そのため、全体的にも浅い眠りになってしまうんですね。
レム睡眠
身体は休んでいるが、脳は起きている時の状態のことを言います。眼球活動が行われているため脳が覚醒している状態であると判断されるのです。脳が覚醒しているため眠りは浅く、夢を見るのもこのレム睡眠のタイミングです。(引用:CLINIC FOR)
ノンレム睡眠
脳も身体も熟睡している状態のことを言います。
寝てから3時間は、ノンレム睡眠になって必要な睡眠を確保しています。
そして、起きる頃の朝方になると、レム睡眠の時間が長くなっていき、起きられるようなサイクルになっています。
睡眠障害とは?
睡眠障害とは、睡眠に何らかの問題がある状態のことをいいます。
注意していただきたい点は、眠れないことイコール不眠症ではないということです。不眠の原因には、環境や生活習慣によるものや、精神的・身体的な病気から来るもの、薬など様々です。
不眠症とは?
入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害など、睡眠に問題がある状態が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気のこと。
高齢者に多い睡眠障害
高齢者が特にかかりやすい睡眠障害があります。
睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群・周期性四肢運動障害・レム睡眠行動障害などが代表的です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が10秒以上止まる疾患のこと。1時間あたり5回以上の無呼吸、もしくは呼吸が弱くなる低呼吸が発生している場合は、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。いびきを伴うことがほとんど。無呼吸の状態が続くと血中の酸素が不足してしまい、日常生活に支障を来すことも。
無呼吸になり、そのまま呼吸が止まってしまい、突然死の可能性もあるんですよ。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
主に夕方から深夜の時間帯に下肢を中心として、「ムズムズする」「痛がゆい」といった異常な感覚が出現してくる病気のことを言います。足を動かすとこの異常感覚はすぐに消えるますが、じっとしていると再び出現してきます。
痒いから、虫でもいるのかな?って思ったり。。
アレルギーとか一時的なものかと勝手に思い込んでたら、ひどくなったのよ。
検査したら、貧血によって起こってたみたいで、かなり驚いたわ。
ただ、あまり身体を動かさなかったり、タバコを吸う人、肥満体系の人には多いとは言われていますね。
他にも、様々な病気が関連して起こりやすくなることもあるそうですよ。
日々の健康管理がとても大切になってくるってことね!
周期性四肢運動障害
睡眠中に片足あるいは両足がピクピクした状態が周期的に起こります。そのため、頻回に脳波上の覚醒反応が生じてしまい、夜間眠れなくなったり、日中に眠くなってしまう病気のこと。
レム睡眠行動障害
レム睡眠の時に体が動いてしまう睡眠障害のことを言います。レム睡眠時は脳は覚醒している状態ですが、体を支えている骨格筋は、弛緩状態で力が入らないようになってしまいます。症状としては寝言を言ったり、殴る、蹴るなどの暴力的な行動をするケースも。
急に起きて歩き出しちゃうこと。。それとは違うの?
8歳以上になってくると、脳の構造上、症状は出なくなってきますから、安心して下さい。
ただし、8歳以上になっても、夢遊病のような症状が出現した場合は、お子さんにストレスなど心理的なものが関係している可能性があるので、受診をお勧めしますよ。
安心したわ。。
「パーキンソン病」や「レビー小体型認知症」の初期症状とも言われています。
同居されている家族が気付いたり「起きたら怪我してた!」なんてことがあったら、早めの受診をお勧めします!
睡眠障害を予防するためには?
では、睡眠障害になりにくくするためには、どうしたらいいのでしょうか?
規則正しい生活を心がける
体内時計は約25時間と決まっています。朝は起きる!夜は寝る!というサイクルがあります。
規則正しい生活を繰り返すことで整いやすくなりますが、年齢を重ねるにつれて、メラトニンというホルモンが減少することにより、このサイクルが乱れやすくなります。疲れやストレスにより、さらにホルモンが減少することになるので注意が必要です。
(引用:武田薬品工業株式会社)
上記のグラフのように、メラトニンは、年齢を重ねるとともに分泌量が減ってくることが分かります。
決まった時間に起きて、ご飯を食べて、散歩して。。夜はお風呂に入って寝る!
みんなそれぞれの生活がありますが、少し乱れただけでも、体調の変化が出てくるので、気を付けて下さいね。
メラトニン
脳の中央に位置する「松果体」という部分で生成・分泌されているホルモンのことを言います。生活リズムを調整したり、アンチエイジングの効果もあります。
睡眠障害対処12の指針
- 睡眠時間はひとそれぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
- 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
- 同じ時刻に毎日起床
- 光の利用でよい睡眠
- 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- 昼寝をするなら、15時前の20~30分
- 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
- 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のびくつき・むずむず感は要注意
- 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
- 睡眠薬の代わりの寝酒は不眠のもと
- 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
- 上記は、厚生労働省が推奨しているガイドラインになります。
年齢を重ねるにつれて、ホルモンバランスの変化を理解しながらも、ガイドラインに沿った、生活スタイルを行っていくこと。そして、異常があったら、放置せず我慢せずに、専門医に相談すること。
睡眠薬に抵抗がある人は多いかもしれませんが、ちゃんと医師の指示の下で正しく使えば、全然問題はありません。逆に眠れないことを我慢し、日常生活が疎かになってしまうことの方が危険です。
まずは、何が原因で眠れないのか、突き止めてから対応していくことも大切となってきます。
睡眠不足が続くと起こる問題とは?
睡眠不足になると、どのような症状や影響があるのでしょうか?
日中の活動意欲が低下
学生の頃、よく徹夜をしていた私ですが、寝不足であればあるほど、授業に集中できずに何も覚えられなかったこともありました。
このように、脳は身体全体の指示を出す役割があります。それが、睡眠不足になることで脳の活動量が低下してしまうのです。
ミスがいつも以上に増えるのと同時に、自然と「動きたくない」「何もやりたくない」ということが増えてしまいます。
その結果、さらに夜眠れなくなるという負の連鎖が起こってしまうのです。
転倒リスクが高くなる
寝不足により、集中力の低下とともに注意力の低下にもなります。運動に対する集中力や注意力の低下はそのままバランス能力の低下を引き起こします。
若い頃は「大丈夫!平気!」だったかもしれませんが、年齢を重ねるにつれて、身体と気持ちのバランスにズレが生じます。
例えば、若い時は「こんな場所、大丈夫だよ!飛び越えられるよ!」と思ってやっていたかと思います。それが、年齢を重ねていくと、若い頃と同じような感覚で行ってしまい転倒もしくは、骨折という最悪な場合に陥ります。
骨折が原因で、介護が必要な状況になり、最悪寝たきりになってしまう可能性もあるので注意が必要です。
病気になりやすい
寝不足になると体が休まることができず、コルチゾールが体内に蓄積されます。
このコルチゾールによって脳が萎縮しやすくなり、認知症が引き起こされる可能性が高まります。
また、自律神経の乱れが起こり、うつ病や生活習慣病などにもなりやすくなります。
その他、免疫力の低下も起こりやすくなるため、風邪やウイルスなどによる感染症にもかかりやすくなります。
コルチゾール
副腎皮質から分泌されるホルモンの一種のこと。ストレスを受けることによってこのホルモンの分泌が増えることから
「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
まとめ
まとめ
- 高齢者とは、65歳以上の人のこと。
- 睡眠には「レム睡眠」「ノンレム睡眠」がある。
- 睡眠障害は一か月以上続いてしまうと不眠症になってしまう。
- 規則正しい生活と、睡眠障害対処12指針を参考に、睡眠障害を予防することも大切!
- 睡眠障害が起こると、日中の活動意欲の低下や転倒リスクが高くなり、さらに病気にもなりやすくなるので注意!
年齢を重ねていくと、どうしても以前の若い気持ちが残っており、ついつい今現在の自分の身体を忘れがちになってしまいます。
今現在の自分の事を自覚することも大切ですし、時には無理せずに周囲の人へ助けを求めることも必要となってきます。
私の祖母の場合、毎日手作り料理を作り、みんなにふるまい喜んでもらう事が多かったです。それが突然、無気力になってしまい、パンやカップラーメンなどのインスタント食品ばかりになってしまっていたのです。
私が祖母の家に泊まりに行って気が付いたのは、夜中のイビキ、無呼吸により眠れなくなっていたのでした。
独居で生活していた祖母は、自覚がなかったのです。思い切って、病院へ連れて行ったところ、内服薬が処方されました。即効性はないので、少しずつでしたが改善が見られ、今では自分から「買い物行きたい!」「これ食べてみてよ!」などと、以前の元気な祖母に戻りつつあります。
最近では裏庭で家庭菜園も始め、野菜が出来るたびに喜び、料理をふるまうまでになりました。
このように、うつ状態や認知症になる前にも、今現在の生活の見直しや、家族や周囲の助けも必要となってきます。
手遅れになる前に、早期発見と少しずつで良いので日常生活の見直しや改善を行ってみてはいかかでしょうか?